使用貸借の権利が付着している土地の評価額〜自用地か貸家建付地か
相続税法においては、被相続人の有している財産を相続開始時の時価によって評価して、
相続税を計算する事となっています。
ここでいう時価とは、財産評価基本通達の定めによって評価された価額をいいます。
例えば、土地であれば路線価や倍率で評価してくださいね、
建物であれば、固定資産税評価額に倍率を乗じて評価してくださいね、
と財産評価基本通達に定められています。
一般的に自分が所有している土地は、処分換金に際して何の制約もありませんので、
自分が用いている土地=自用地として100%で評価します。
路線価が10万円の道路に面してる地積100uの土地であれば、10万円×100u=1千万円
(※土地の形状等による各種の補正はないものとします)
と評価します。
では、
この上にアパートを建てて第三者に有償で賃貸していた場合の土地の評価はどうなるでしょうか。
先ほどの処分換金の可能性という見地から考えると、
アパートに住んでいる人がいますので、簡単に処分換金はできなくなります。
というのは、アパートの住人は借地借家法によって保護されていますので、
例え第三者に売却できたとしても、第三者が立ち退きを求める事ができず、
結果として市場での換金は非常に難しくなるからです。
そのため、土地の評価に際しても自用地のように100%で評価するのではなく、
その土地の係る借地権割合と、
その貸家の借家権割合を乗じた割合を控除して評価するという事になります。
具体的には、上記の土地で借地権60%、借家権30%の場合、
自用地価額1,000万円 ー(自用地価額1,000万円×0.6×0.3)=820万円
という評価額になります。
こうすれば、自用地よりも処分換金性の低い事が反映されているような感じの評価額になります。
よく、相続税対策でアパートを建設する事がありますが、
それはこの計算が根拠となっています。
つまり、
上地部分のうち借家権によって制限される部分を自用地評価額から控除しているのですね。
これが、貸家建付地の評価といいます。
それでは、次の場合はどのように評価すると思いますか?
子供が父親所有の土地をタダで借りて、
その上にアパートを建てて第三者に有償で貸していました。
父親が無くなってその土地を相続する事になりましたが、
この場合の土地の評価は自用地でしょうか。
それとも、貸家建付地でしょうか。
答えは、自用地評価となります。
貸家建付地で評価が下がったのは、他人の権利部分が入ってくると処分換金性が低くなるから、
と先ほど理解しました。
では、この土地の処分換金性はどう考えれば良いのでしょうか。
通常の有償の賃貸借であれば、権利金や相当な地代を支払っており、
借主は借地借家法によってその権利(借地権)が保護されていますので、
地主は安易な契約解除や処分を行う事ができません。
しかし、子どもにタダで貸している(使用貸借)という事は、
信頼関係に基づく契約であり、借地権の価値も発生しませんので、
ほぼ自分が自由に使える土地と考える事ができます。
とすれば、相続税評価額も自用地評価額となります。
相続税対策のつもりでアパートを建てたのに、実は評価減にはならなかった、
という事のないよう、権利関係には十分な注意が必要です。
相続対策や相続税でお困りの時は、いつでもご相談ください。